業務委託なのに他社の仕事は禁止?専属・競業避止・秘密保持の確認点
業務委託なのに他社の案件を受けてはいけないと言われた。専属・競業避止・秘密保持を分け、制限の対象、期間、例外、契約終了後の扱いを確認する方法と質問文を整理します。

この記事で分かること
- 他社案件の禁止は、契約名だけで適法・違法を決めず具体的な制限を確認する
- 秘密情報を守ることと、他社の仕事を一律に禁止することは別の問題
- 対象業務・期間・例外・報酬を並べ、口頭の説明と条項の差を残す
- 広い制限や説明のない変更は、契約とやり取りを持って相談する
「雇用ではなく業務委託だから、自由に働ける」。そう説明されたのに、契約書には他社の仕事を禁止する文言がある。初めてIT・Webの案件を受けるとき、この食い違いは気になるはずです。
確認したいのは、他社案件を受けられるかという一言の答えより、何を、いつまで、どの理由で制限されるのか。秘密情報を守る約束と、仕事の選択肢を閉じる約束は、分けて読む必要があります。
厚生労働省の公式ガイドライン解説は、仕事で得たスキルや知見を理由に他社受注を禁じる例を挙げ、合理的な範囲を超える秘密保持義務等の一方的な設定が問題になるおそれを示しています。ただし、個別の競業制限がすべて違法・無効になるという説明ではありません。
出典:厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」解説・CASE12
この記事では、他社受注の制限に絞って確認点を整理します。時間管理や指示の実態にも疑問がある場合は、業務委託の勤怠管理と労働者性も別の論点として確認してください。
専属・競業避止・秘密保持は、見出しより中身を読む

「専属」「競業避止」「秘密保持」は、契約を読むときの整理の入口です。同じ名前でも契約ごとに中身が異なるので、名前から禁止範囲を推測しない方が確実です。
| 条項の名前 | まず確認する内容 | 曖昧なままにしない点 |
|---|---|---|
| 専属 | 他の取引先との契約や受注をどこまで制限するか | 全案件か、特定の仕事だけか |
| 競業避止 | 競合する業務・取引先の範囲 | 「競合」の定義と、契約終了後の期間 |
| 秘密保持 | 利用・開示を制限する情報 | 他社受注の禁止まで含むのか |
この表はNARUによる契約の読み分けです。条項の法的な有効性を判定する表ではありません。
例えばWeb制作で「顧客から預かった未公開の資料を外部へ渡さない」という話と、「今後はWeb制作の仕事を他社から一切受けない」という話では、自分の仕事に与える影響が違います。これは説明用の仮例です。実際には秘密情報の定義や制限の範囲を、条項全体から確認します。
「秘密保持のため」と説明されたら、何の情報が、どの行為によって漏れることを防ぎたいのかまで聞いてみましょう。目的が具体的になると、情報の持ち出し禁止と受注そのものの禁止を切り分けやすくなります。
「教えたから他社で働くな」という説明は、そのまま受け入れない
公式ガイドラインが指摘しているのは、発注者が必要な範囲を超える制限を一方的に設定する問題です。「育てた」「ノウハウを教えた」という説明だけで、どんな制限でも正当になるわけではありません。
一方で、受注者側も秘密情報や契約上の義務を自己判断で無視してよいわけではありません。相手の説明に納得できないときこそ、契約文と具体的な要求を残すことが次の判断につながります。
質問を具体的にする
「他社の仕事は禁止ですか」だけでなく、「同じ職種の仕事が全部対象ですか」「指定された競合だけですか」「契約終了後も続きますか」と分けて聞く。
取引上の立場や、制限によって受ける不利益も相談時の材料になります。公式解説では、優越した地位を利用して不当に不利益を与える行為についても説明されています。取引先が大企業かどうかだけで決めず、取引を断る難しさや、収入への影響などの事情を伝えてください。
正社員から業務委託へ切り替える話であれば、契約と働き方の実態のズレも一緒に整理できます。他社受注を禁止されている事実だけで、労働者性が確定するわけではありません。
契約前に、制限の範囲・期間・例外・報酬を並べる

受注の選択肢が狭まるなら、その条件を理解してから収入や働き方を判断したいところです。次の4点を、口頭説明ではなく記録に残る形にそろえましょう。
| 確認項目 | 発注者に聞きたいこと |
|---|---|
| 範囲 | 対象の会社・業種・職種・案件はどこまでか |
| 期間 | 契約中だけか、終了後も続くか。終わる日はいつか |
| 例外 | 既存の取引先、別分野、事前承認などの例外があるか |
| 報酬 | 受注を制限される条件と、発注量・報酬の約束がどう対応しているか |
報酬の確認は「この金額なら法的に有効」という判定ではありません。他社からの収入を制限されるのに、発注量が保証されない契約でよいのかという生活・事業上の判断です。
「事前承認があればよい」場合も、誰へ、どんな情報を、いつまでに送るのかが曖昧だと案件を受けにくくなります。別の取引先の秘密情報まで送らずに済む確認方法も、相談しておくと安心です。
契約条件自体がまだ示されていない場合は、業務委託の書面・取引条件の確認から整理してください。
質問文は、条項と希望する仕事をセットにする
次はNARUの編集例です。法的な通知書式ではなく、契約の説明を求めるための文面なので、実際の条項と案件に合わせて調整してください。
契約書の第○条にある他社業務の制限について確認させてください。対象になる会社・業務の範囲、制限期間、既存取引や別分野の案件の扱いを教えていただけますか。現在検討している○○の業務について、貴社の秘密情報を使用せずに受ける場合も対象になるか、記録に残る形でご説明いただけると助かります。
確認前に「もう受けました」と伝えるより、予定する業務と制限の関係を先に照合する方が、説明の食い違いを見つけやすくなります。ただし、返信を待つ間に別の案件の期限が来るなら、その期限も相手へ共有しましょう。
口頭で説明を受けた場合は、「本日のご説明は○○という理解でよいでしょうか」と短く送り直す方法があります。送信しただけで合意が成立したと決めず、相手の返答まで保存してください。
広い禁止や突然の変更は、記録を持って相談する

「同業の仕事を無期限に禁止」「対象はその都度こちらが決める」「終了後も制限するが理由は説明しない」。このような要求に困っているなら、契約書とやり取りを持って相談できます。例は相談のきっかけを示すもので、単独で違法性を判定する基準ではありません。
フリーランス・トラブル110番は、契約や仕事のトラブルについて弁護士に無料で相談できる厚生労働省委託事業です。条項の全文、変更前後の内容、制限を伝えられた日、受けたい仕事と収入への影響を用意すると、事情を説明しやすくなります。
契約を終えることまで考えている場合は、業務委託を辞める前の確認点へ。終了の手続きと、終了後も残るとされる制限は別々に確認してください。
自由な働き方を選ぶつもりだったなら、他社案件の制限は小さな注意書きではありません。自分の仕事の選択肢がどこまで残るのかを、契約前に具体的な言葉へ直しておくことが大切です。
参考資料
どの記事から読めばいいか迷った方へ
転職完全ガイドから読むよくある質問
業務委託なら、他社の仕事を自由に受けられますか?
契約に受注の制限があるか、具体的に何が禁止されているかを確認する必要があります。業務委託という名称だけで、制限がすべて有効とも、すべて無効とも判断できません。範囲・期間・理由を整理して相談してください。
秘密保持契約を結ぶと、同業他社の案件は受けられませんか?
秘密情報の利用・開示を制限する条項と、他社への役務提供を禁止する条項は区別します。秘密保持という見出しの中に受注禁止が含まれている場合もあるため、条文そのものを確認してください。
契約書に書いてあれば、広い受注禁止も問題ありませんか?
書面にあるだけで問題がなくなるとは限りません。公式ガイドラインは、合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等を一方的に設定する行為が問題になる場合を示しています。個別の条項の有効性は専門家に確認しましょう。
契約終了後も他社案件を禁止されたら、どこに相談できますか?
契約書、禁止を伝えられたメール、制限期間、希望する仕事の内容を整理し、フリーランス・トラブル110番などに相談できます。終了後の競業制限と、秘密情報を守る義務を分けて伝えると論点が明確になります。



