業務委託の振込手数料は誰が負担?報酬から差し引かれたときの確認点
業務委託の報酬から振込手数料が引かれた。2026年以降の発注と以前の取引を分け、フリーランス法の適用条件、入金差額の確認、発注者への問い合わせ文を整理します。

この記事で分かること
- 振込手数料の控除は、合意の有無だけで判断せず発注日と適用条件を確認する
- 公取委は2026年1月1日以降の発注分について、合意があっても報酬からの控除は減額に当たると説明
- 入金差額の原因は、支払明細と報酬額を照合して特定する
- 金額・控除名目・発注日の記録を残し、説明が得られなければ相談する
報酬は振り込まれた。でも、約束した額より少ない。明細には「振込手数料」と書かれている。
「契約書に受注者負担と書いてあったから、仕方がないのか」「少額を聞き返すと細かい人だと思われるのでは」。初めて業務委託の報酬を受け取ると、差額を確認しにくいことがあります。
まず、発注日・約束した報酬額・入金額・控除名目を並べてください。振込手数料の扱いは、合意の有無だけでは判断できません。公正取引委員会は、2026年1月1日以降の発注分について、合意があっても振込手数料を報酬から差し引くことは「報酬の減額」に当たると説明しています。自分の取引にこの禁止が適用される条件も、併せて確認する必要があります。
この記事は、入金された報酬から振込手数料が引かれた場合に絞ります。報酬額や支払日がそもそも示されていないなら、業務委託の契約条件を確認する方法が先の確認点です。
「合意していればよい」という説明は、発注日を確認する
公正取引委員会は2026年10月8日にフリーランス法の特設サイトを公開しました。振込手数料の項目では、現在の扱いと2025年以前に発注した取引の扱いを分けて案内しています。
これは、10月8日から新しく始まったルールという意味ではありません。6月18日の勧告資料にも、2026年1月1日以降の発注分に関する説明があります。古い記事や契約の文言を読むときは、情報の掲載日と、対象になる発注日を分けて見ましょう。
| 発注の時期 | 公取委の案内で確認できる扱い |
|---|---|
| 2026年1月1日以降 | 合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬から差し引くことは減額に該当 |
| 2025年12月31日以前 | 委託前に書面・メール等で受注者負担を合意し、金融機関へ支払う実費の範囲内で差し引く場合は、減額に該当しない扱いが示されている |
この表はフリーランス法の減額禁止についての整理です。下の適用条件も併せて確認してください。「今年振り込まれたから今年の発注」とは限りません。基本契約に加えて個別の発注や更新がある場合は、どの取引の報酬かを特定します。
出典:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」(2026年10月8日公開)、「株式会社エス・ピー・シーに対する勧告について」(2026年6月18日、注2)

自分の取引に減額禁止が適用されるかを確認する
フリーランス法の「報酬の減額の禁止」は、すべての業務委託契約へ同じ条件で適用されるわけではありません。主に次の点を確認します。
| 確認点 | 見る内容 |
|---|---|
| 受注側 | 従業員を使用しない個人、または代表者以外の役員と従業員がいない法人など、同法のフリーランスに当たるか |
| 発注側 | 従業員を使用する個人、または役員が二人以上いるか従業員を使用する法人など、特定業務委託事業者に当たるか |
| 取引 | 事業のために行う業務委託か |
| 期間 | 1か月以上の業務委託に当たるか。基本契約や更新を含む期間の考え方も確認する |
出典:公正取引委員会「フリーランス法のパンフレット」法律上の定義・一定期間以上の業務委託
例えば、Web制作の個別発注が短期間でも、基本契約があるときは、その期間を含めた確認が必要な場合があります。納品にかかった日数だけで判断しないでください。
適用が分からない場合は、契約と発注記録を用意して窓口へ確認します。この条項の対象か不明だからといって、入金差額の説明を求めることまで諦める必要はありません。契約上の報酬や他の法令の検討は、個別に相談できます。
受注者の希望で振込先を変えた場合の追加費用は別の確認点
公取委のQ&Aは、合意した口座から受注者の都合で別口座へ変更し、その変更で新たに生じた費用については受注者に負担させることが認められる場合を説明しています。
これは、通常の振込手数料を一律に差し引いてよいという説明ではありません。変更前の合意、変更を求めた経緯、変更で増えた費用を確認する必要があります。
入金差額を「手数料だろう」で済ませず明細と照合する
請求書の総額と入金額が違っても、差額だけを見て振込手数料と決めることはできません。支払明細や相手の説明から、何を差し引いたのかを確認します。

| 手元の資料 | 確認すること |
|---|---|
| 発注書・メール | 今回の報酬額、税込・税別の記載、発注日 |
| 請求書 | 対象案件、請求額、別途精算する項目 |
| 支払明細 | 控除の名目、金額、計算の説明 |
| 口座の入金履歴 | 実際に受け取った日と金額 |
税の処理、経費の精算、プラットフォームの利用料などがある場合も、金融機関への振込手数料とは分けて確認してください。「手数料」という名前だけで、すべて同じ扱いにまとめないことが大切です。
同じ差額が複数回続いているなら、各回の発注日・支払日・控除額を一覧にします。明細がない場合は、差額の内訳を文書でもらえるか尋ねましょう。
発注者には、控除の名目と計算根拠を文書で尋ねる
相手へ連絡するときは、今回の差額を特定できる情報を添えます。次はNARUの編集例です。実際の案件名、発注日、報酬額、入金額を入れて使ってください。
件名:報酬の入金額と控除内容の確認
お世話になっております。今回の案件の入金を確認しましたが、発注時に示された報酬額と差額がありました。
控除の名目、金額、計算根拠を文書でお知らせいただけますでしょうか。振込手数料の控除の場合は、今回の発注日に対応した取扱いも含めてご確認をお願いいたします。
差額の説明が既にあるなら、同じ質問を繰り返すより、その説明と公式案内で食い違う点を具体的に示します。「以前からこの運用です」という回答だけでは、今回の発注に対応した説明か分かりません。
連絡の目的は、相手を非難することではなく、約束した報酬と支払いの内訳を確かめることです。電話で回答を受けた場合も、内容をメールで確認し、後から追える形で残します。
説明が得られない場合は、差額の記録を持って相談する

フリーランス・トラブル110番は、一方的な報酬の減額などの相談にも対応しています。発注日、報酬額、入金額、手数料に関する合意や説明、相手の返答をまとめて相談できます。
少額でも、継続取引で同じ控除が重なるなら、各回を分けた記録が役立ちます。返金の可否や具体的な対応は、資料を確認した相談先へ尋ねてください。
正社員から業務委託へ切り替えたばかりで、働き方や報酬全体にも疑問がある場合は、正社員から業務委託への切り替えの確認点も併せて確認できます。振込手数料の問題と、契約の切り替えや労働者性の問題を分けて伝えると、相談内容を整理しやすくなります。
参考資料
どの記事から読めばいいか迷った方へ
転職完全ガイドから読むよくある質問
振込手数料を受注者が負担すると合意していれば、引かれてもよいですか?
公正取引委員会は、2026年1月1日以降の発注分では、合意の有無にかかわらず振込手数料を報酬から差し引くことは減額に当たると説明しています。ただし、自分の取引に減額禁止が適用されるかは、当事者と委託期間などの要件も確認します。
2025年に発注された仕事も同じ扱いですか?
公式案内は2025年12月31日以前の発注分を区別しています。委託前に書面や電子メール等で受注者負担を合意し、金融機関に支払う実費の範囲内で差し引く場合の扱いが示されています。支払日だけでなく、どの発注に対する入金かを確認してください。
数百円の差額なら、すべて振込手数料ですか?
金額だけでは原因を判断できません。契約・発注時の報酬額と支払明細を照合し、差額の名目と計算根拠を確認してください。税や別の精算項目も、振込手数料とは分けて確認します。
発注者に聞いても説明がない場合はどうすればよいですか?
発注日、報酬額、入金額、控除の説明、やり取りの記録をまとめて相談できます。フリーランス・トラブル110番は、一方的な報酬の減額などの相談にも対応しています。



